2013/01/06

映画の豊穣を味わう - Virginia by Francis Ford Coppola -


『ヴァージニア』をみていると、映画を撮りたくなる。こんな風に撮れたらどんなに楽しいだろうと、観客であるわたしはここに至るまでの監督の道のりなどに思いも馳せず身勝手に感嘆する。

思えば『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』にしびれ、村上龍によるその過酷な現場撮影レポートなども読んだのだった。その後『ドラキュラ』は悪くないのだとの評を読んで観たものの、もはやどんな感想を持ったのかさえ覚えていない。
そして事業家として自身のワイナリーの成功を間にはさみつつ近年の『胡蝶の夢』、『テトロ』(かなりしびれる)ときて本作である。

とくに説明する必要もあるまい、誰がみてもこの人物たちの距離感、カットの余裕、それらをつなぐ呼吸、ちょっとした遊びが映画の破綻とならずに豊かさへと貢献している幸福、古典的な題材と一致したかのような小さい町の雰囲気、と一致したかのような本作のつつましさ。むしろ大作ではなくつつましいが故に映画としての豊かさを実感できるであろう。
われわれと『ヴァージニア』との出会いは、まさしくヴァル・キルマー(このオッサン度を見よ)とエル・ファニングの森の中での出会いと等しいものとなる。

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