2013/01/06

喪 - J.Edgar by Clint Eastwood -


『J・エドガー』を観てはじめに思ったのは齢81のクリント・イーストウッドによる、前世紀アメリカへの喪の作業ではないかということだった。
FBIを長年にわたり牛耳ったJ.エドガーに焦点をあてることでちょうど自分が生きたアメリカの歴史をなぞることができるし。
全編地味なトーンで着実に展開するあたり、近作のような若々しさは影をひそめ、遺作のにおいがしても不思議ではない。
(近作が若々しいとはいえ、そのまなざしは既にこの世のものではないのだけど。blognotes2: すべてのひとに『ヒアアフター(来世)』を贈ろう。参照)

しかし(というか喜ばしいことに)まだイーストウッドは健在で、あろうことが引退宣言したはずの俳優としても復活し『人生の特等席』に主演してしまっている。
このように発言が信用ならない偉大な人物というのは珍しいことではないのだけど、イーストウッド自身についても発言からはその人となりがとにかくよくわからない人で、そんなこととは無関係にイーストウッドに影響を受けたとする人々は次々とあらわれ、映画界のみならずついには『ジョジョ』の荒木飛呂彦先生までが条太郎のモデルだとおっしゃる!(JOJOmenon (集英社ムック)より)

閑話休題。このJ.エドガーは愛の物語でもあるのだけど、「ホモの愛」を描いたわけではなく、むしろ男色であることにより「男女の愛」のジェンダーを離れた「愛」そのものについての深い表現になったように思う。
男女の愛については涙ちょちょぎれずにはいられない『マディソン郡の橋』があるのだし。

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